この数年、AIが一気に広まったとはいえ、まだどこか遠い存在のように思っている人は少なくない。それなのに、ある日突然「MITライセンスでフリー公開されたモデルが、人類の“当たり前”を根底から変えようとしている」と聞けば、多くの人が半信半疑になるのも無理はない。しかし、実際にそんなモデルが世界中を駆け巡れば、あらゆる産業や国の戦略が一気にシフトし始めるのは自然な流れだ。特に大規模言語モデルを軸にしたAIは、膨大なデータと高度な推論能力によって、ビジネスや社会、そして個人の暮らしを丸ごと書き換える可能性を秘めている。ここでは、そんな革新的なモデルが世界へオープンソースで解放されたときに何が起きるのか、そして日本を含む世界各国がどのように動き、どんなチャンスやリスクが待ち受けるのかを、とことん深堀りしてみたい。
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Toggle新しいAIモデルがオープンソース化するインパクト
大規模言語モデルを丸ごとフリーで公開するとなると、まず開発コミュニティが激しく盛り上がる。巨大な研やベンチャーだけでなく、大学の研究室や個人開発者ですら「このモデルを使って何か面白いものを作れないか」と動き出すだろう。人類が積み上げてきた膨大な知識やテキストを扱えるモデルを、誰もが自由に改変・再配布できるという状況は、これまでの技術の常識を覆すレベルのインパクトを持つ。
さらに、オープンソースならではのコミュニティ監査が働くので、モデルに不具合や潜在的な脆弱性があれば、世界の開発者が総力で発見と修正に取り組んでくれる利点もある。もちろん、逆に悪意のある集団がモデルのコードを悪用するリスクも増すため、セキュリティ面での注意は常に必要だ。しかし多くの人にとっては、新機能の追加や性能改善のスピードが格段に上がるメリットのほうが魅力的だろう。
こうしたオープンソース化の動きが大きく進むと、それまで「クローズドな大手だけが占有する領域」と思われていたAI開発の世界は、一気に民主化が進む。それは同時に、大手企業を含む既存プレイヤーにも大きなプレッシャーを与える。無料で高性能なモデルが手に入るなら、新規参入者にとっては参入障壁がぐっと下がるし、先行企業は自分たちの有料サービスとどう差別化していくか真剣に考えなければならない。数年後には、AI市場が「オープンソース派生の巨大コミュニティ」と「クローズド系エコシステム」のせめぎ合いになるかもしれない。
個人や小規模チームが気軽に大規模言語モデルを使えるようになると、突拍子もないユニークな発想が続々と形になる。例えば「地域密着型の方言チャットボット」や「専門技術に特化したQAシステム」など、従来は大手が大金を投じないと作れなかったはずのアイデアが次々に生まれる。その過程で、世界中の人々がAIと触れ合う機会が増え、「機械学習って面白そう」というモチベーションを持った若手が一気に増えていくだろう。
モデルを一から訓練するのが難しかった時代には、莫大な資金やインフラを持つ一部の組織だけが“先端”を独占していた。しかしオープンソース化は、その構造を根底から崩すパワーを持っている。一度公開されたモデルを元に誰もがカスタマイズできる世界では、AIの進化スピードはかつてないほど加速し、モデル同士の“競争”も多種多様な形をとり始めるはずだ。
大手AI企業はどう対抗しようとするのか
大手企業があっさり駆逐されるかというと、もちろんそう単純でもない。オープンソースモデルがいくら優秀でも、大手企業は豊富な資金力とリソースを活かし、次々と新しい大型モデルを開発したり、統合プラットフォームを整備したりするからだ。たとえば、既存のクラウドサービスに大規模言語モデルを全面的に組み込み、クリックひとつでAIを呼び出せる環境を提供するかもしれない。
さらに大手はブランド力を持っており、セキュリティ面やカスタマーサポートなど、企業が求める“安心”を総合的に売りにできる。OSSモデルが無料で手に入るとしても、導入から運用、カスタマイズまでを一貫サポートしてくれるところは限られる。特に大企業や公共機関は、トラブル時に駆け込める支援サービスを重視するので、実績のある大手AI企業との契約を継続するケースも多いはずだ。
こうした戦略では、モデル自体の値段や性能というより「周辺サービス」「エコシステム」で差をつける動きが加速する。いわばハードウェアやソフトウェアの機能は大差ないとしても、実績あるプラットフォーム企業が“運用のノウハウ”や“認定パートナーネットワーク”を独自の価値として提供するイメージに近い。そこに便利な管理ツールやセキュリティ監査、さらに企業同士のコミュニティまで絡めると、無料のOSSモデルだけでは手が届きにくい領域をしっかり掌握できるわけだ。
一方で大手は、常に“次の進化”を追求しなければならない。オープンソースの勢いを甘く見ていると、あっという間に新興スタートアップや研究コミュニティが驚くほど洗練されたバージョンを作ってしまい、大手のモデルが時代遅れになるリスクがある。だからこそ資金力をフルに活かして、現行のトップモデルをさらに超える規模や効率性を追求し、「みんなが追いついた頃には、さらに先へ行っている」状態を維持しようとする。
このように、大手クローズド勢とOSSコミュニティが両輪のように切磋琢磨することで、結果的には世界のAI全体がものすごい勢いで進化していく。加速する技術革新の渦中で、新しいルールや規制、あるいは倫理的な問題も次々と浮上するのは必至だ。それでも誰もがAIを使える時代が来ることで、社会全体の創造性と多様な価値観がさらに解放されていくかもしれない。
日本の立ち位置と「出遅れ」論への問い直し
「日本はAI開発で出遅れている」とよく言われる。特に大規模データをガンガン収集している米国や中国に比べて、人口規模や法制度、投資環境の弱さがあるため、大型の汎用AIを国内だけで回すのが難しいのは確かだ。しかし、オープンソースモデルがフリーで入手できる世界では、そこまで大規模な資金やインフラがなくても、先端技術をベースにした開発を始められる余地が広がる。
日本には昔から高い技術力を持つ製造業やロボット産業、医療やインフラなどの分野で世界トップクラスの実績やノウハウがある。それらに自然言語処理モデルを組み合わせれば、かつてないサービスやプロダクトが生まれる可能性は相当に大きい。むしろ、大規模モデルを独力で作る必要がなくなる分、最初から「なら、この優秀なOSSモデルを使って、製造現場の自動化や介護ロボットの対話機能を一気に強化しよう」という発想にシフトしやすい。
とはいえ、データをどう収集し、どんな形で利活用するのかという点では日本独特の壁もある。個人情報保護や企業間データ共有の慣習的なハードルなどがあるため、いざモデルに学習させようとしても、肝心の実データが集まらない問題が浮上しがちだ。ここを打破するには官民連携や法整備をうまく活かし、“安全に配慮しつつデータを集められる環境”を整えることが必須となる。
さらに、AI人材の育成と呼び込みも大きな課題だ。海外の優秀な研究者やエンジニアを引き寄せるような施策を打たないと、オープンソースモデルがあっても高度なカスタマイズや検証が進まない。スタートアップや大学研究室などが積極的に連携し、大手企業もそこに資金と場所を提供するようなエコシステムを築ければ、「実は日本の方が面白い実証実験をたくさんやっている」という流れを作り出せるかもしれない。
結果的に、「日本が出遅れているからこそ、まだ固定観念が少ない」と考える人もいる。何度もやり方を変えなくてはならなかった他国の事例を踏まえ、一挙に“最新のモデル”を使って斬新なサービスを立ち上げるチャンスでもある。オープンソースAI時代の到来を、むしろ「リセットに近い形でスタートできる」とプラスに捉えることができれば、新たな価値創造に向けて大きく踏み出す可能性は十分ある。
DeepSeekR1(MITライセンス)がもたらす「日本語特化」のチャンス
多くの大規模言語モデルは英語を中心に訓練されており、当初は日本語対応がイマイチだったケースが多い。DeepSeekR1のような高性能モデルがMITライセンスで公開により、誰でも自由にファインチューニングできるようになった。これにより、日本語特化版や業種別専門用語に強いバージョンを生み出すのは十分可能だ。コミュニティが日本語のコーパスを追加で学習させれば、一気に精度を底上げできるかもしれない。
国内には医療や介護、ロボティクス、自動車など特化型のテキストデータが豊富にある。これらを活用して「超日本語特化モデル」を作れば、グローバルにはない強みを発揮できる。たとえば専門的な工場作業のマニュアルや農業の技術文書など、ニッチな日本語の文章をしっかり読み解いてアドバイスできるAIがあれば、現場の効率化が大幅に進む。
同時に、日本ならではの言葉のニュアンスや文化的背景を理解する能力は、海外モデルには簡単に真似できないアドバンテージになる可能性がある。これは「バイリンガルで会話できる」「独特の敬語や遠回しな表現を理解する」といった機能を超えて、「日本人が考えがちな発想パターン」を察してくれるAIとして活躍するかもしれない。
さらに、日本語を通じた学習を進める過程で、外部からも「日本のコミュニティで作られているR1派生モデルは品質が高いらしい」と評判が広がれば、自然と世界のOSSコミュニティの中で日本が主導的なポジションを獲得することもあり得る。そうした評価が積み上がれば、研究者や企業との国際連携が促進され、海外投資や共同開発も増えるかもしれない。
ただし日本語特化といっても、国内ユーザー向けに細かく調整したモデルが、必ずしも海外のマーケットで勝てるわけではない。日本語以外の多言語対応をどこまで並行して行うのか、エッジデバイスやローカルサーバーでの動作を見据えるのかなど、運用上の戦略が重要になる。結局、長期的に見れば「国内ニーズを完璧に満たしつつ、世界標準に適応できる多言語対応も進める」というバランスが鍵となるだろう。
産業界の動き:製造業・ロボティクス・通信大手など
製造業×AIのシナジー
日本の製造業は、もともと品質管理や安全基準に強いこだわりを持っている分野が多い。自動車から家電、産業用ロボットまで世界的に評価の高いプロダクトを生み出してきた。しかしデジタル化やDXの面では、海外勢に押され気味という指摘もある。もしDeepSeekR1のような高性能の言語モデルを簡単に組み込めるなら、生産ラインの管理や故障予測、さらには人間とロボットの協調作業などで飛躍的な進化が見込める。
大手ロボットメーカーは、「ロボットに自然言語で指示を与え、その場で動作を最適化できる仕組み」を実装し始めているが、まだ一般的とはいえない。しかし大規模言語モデルを導入すれば、会話型のインターフェイスを通じてオペレーターの意図を汲み取り、センサーデータとつき合わせて動作を調整するような次世代ロボットの開発がスムーズになる。
製造ラインの自動化をさらに進めるためには、多彩な工程や現場の暗黙知をAIが理解し、トラブルを予測し、適切な対策を提案できることが理想だ。この暗黙知の部分こそが日本企業が大切に培ってきたノウハウであり、そこをAIモデルに学習させることで、自社だけの強力な「特殊モデル」を生み出す余地がある。OSSモデルがベースなら、初期コストを最小限に抑えて独自カスタマイズに集中できる点が魅力だ。
日本の大手製造業が率先してモデル開発コミュニティに参加し、自社の知見をフィードバックし合うような文化が根づけば、今後は業界全体の底上げが期待できる。世界の製造業が注目するような“スマートファクトリー先進国”となるシナリオも、決して絵空事ではないだろう。
通信大手・IT企業の役割
ソフトバンクやNTTといった通信大手は、膨大なネットワークインフラやデータセンターを抱えており、AIを動かすための基盤構築にも強みを発揮できる。もしDeepSeekR1をクラウド上でホスティングし、国内企業向けにアプリケーションの開発環境やサポートを提供するプラットフォームを整えれば、幅広い企業が手軽にAIを利用できるようになる。
特に安全保障や機密を扱う大企業・官公庁では、データが海外に流れるリスクを懸念して外資系クラウドを敬遠することがある。そこへ国内通信大手が「セキュアなデータセンターでDeepSeekR1を動かし、国内法のルールを厳守した運用ができる」とアピールすれば、導入が進む可能性は高い。
もう一つの大きなチャンスは、さまざまなスタートアップや研究機関との連携をハブとして進めることだ。オープンソースの良さを最大限に活かすには、プロジェクト単位で専門性の高い開発者が柔軟に集まれる仕組みが欠かせない。通信大手がうまくその調整役を務め、資金提供や環境整備をすれば、日本のAIエコシステム全体が活性化し、革新的なサービスや研究がどんどん生まれるかもしれない。
実際に、クラウドサービスやソフトウェアプラットフォームをまとめて提供しつつ、ユーザー企業が簡単にAIを呼び出せる仕掛けを作れば、海外の大手クラウドに対抗しうるインフラを国内に築ける可能性がある。そうなれば、セキュリティや法的リスクに敏感な企業にとっては「国産AI基盤を使うほうが安心」という選択肢が現実味を帯びるだろう。
セキュリティとオープンソースAIの微妙な関係
「オープンソースはソースコードがすべて公開されるから怪しい仕掛けも可視化しやすい」という利点がある一方、「脆弱性を探そうとする人にとっては丸見えなので攻撃を仕掛けやすい」という側面もある。さらに、国際的な政治情勢を踏まえると、「中国製モデルはバックドアを仕込まれているのでは?」という懸念が常に付きまとう。ただ、完全に秘密裏に作られたモデルよりは公開されているほうが、コミュニティの検証の目が行き届くという見方もできる。
要するに大事なのは、モデルそのものだけでなく、運用環境をどれだけ安全に整備するかという点だ。具体的には、モデルのコードや重みを取得したあとに自社内で追加の監査を行う、機密データを学習させる場合はネットワークを分離する、ログ管理を徹底するなど、さまざまな対策が必要になる。
どれだけ優秀なAIモデルが無償で手に入っても、扱う側がセキュリティの知識を持たずにポンと導入してしまえば、機密情報を垂れ流しにしてしまうリスクがある。とくに利用シーンが増えれば増えるほど、AIに入力するデータが多様化し、誤って不必要に機密を送信してしまうケースも出てくる。結局のところ、オープンソースかクローズドかを問わず、「どこまで運用を丁寧にするか」が鍵なのだ。
ただし、オープンソースのAIモデルがMITライセンスなどで広く公開される現象は、総合的にはプラスに働くと見る専門家は多い。モデルの内部構造を徹底して調べ上げる“目”が格段に増えるので、意図的な不正やサイバー攻撃の原因が仕込まれていれば、いつかは暴かれる可能性が高い。もちろん油断は禁物だが、クローズドなブラックボックスよりは透明性が上がりやすいという点で、セキュリティ面でも利点があるといえる。
多層的・創造的な思考が求められる時代
AIのオープンソース化が進むほど、世界のあちこちで「矛盾していると思われていた要素を無理なく統合する」ような取り組みが増えそうだ。例えば、効率化と創造性は相反すると信じられていたが、AIが人間の単純作業を代行することでむしろ人間が創造的な業務に集中できるようになるかもしれない。こうした“パラドックスを織り込みながら両立する”思考が得意な組織や企業が大きく花開く可能性がある。
加えて、時間軸を大胆に扱う視点も重要になる。未来から逆算して今を見直す方法や、過去に実現しなかったアイデアを掘り起こしてみる発想など、常識的な「時間は一方向」という枠を超えた思考が当たり前になりつつある。オープンソースAIなら、過去のデータをどこまで活かすか、未来に向けてどんな学習データを追加するかなどの選択肢が柔軟に広がるからだ。
さらに、文化や価値観の違う人たちが一つのオープンコミュニティで開発を進めると、従来とは全く異なるアイデアが“融合的”に生まれやすい。独特の感性を持つ研究者や開発者が、好き勝手にモデルを改変し、意外な組み合わせでプロトタイプを発表するような光景が増えるだろう。その中から“次の時代のスタンダード”になりうる技術やサービスが突然飛び出してくることも大いにある。
これまで世界が抱えてきた社会問題や産業課題の多くは、AIのパワーで一気に解決に近づくかもしれない。それこそインフラの老朽化や介護の人手不足、医療リソースの逼迫など、誰もが何十年も悩んでいる大問題に対して、新しいソリューションを創り出す余地が大きい。日本がそれらの課題解決を先行してやってのければ、そこに莫大なビジネスチャンスや国際的な貢献の可能性が待っている。
官民連携とデータ活用で飛躍するためのアクション
データ活用ルールの明確化
せっかくオープンソースのモデルがあっても、学習データがなければ性能を引き出せない。日本国内の省庁や自治体、企業同士がデータを共有しやすくなるよう、法整備やガイドラインの作成が急務だ。プライバシーに配慮しつつ、匿名化やセキュア連携を実現する技術はすでに存在するので、それらを積極的に取り入れる姿勢が求められる。
AI人材育成と国際交流
大学や専門機関が企業と連携し、研究成果を現場に適用するパイプを強化することが重要だ。さらに海外からの人材を呼び込むビザ制度の改革なども不可欠で、「日本のAI研究コミュニティは外から来ても活動しやすい」と思われるような環境整備が望まれる。大企業だけでなく、中小ベンチャーも参加しやすいオープンプラットフォームがあるとより活性化しやすい。
コミュニティ支援とスポンサーシップ
OSSを活かしたプロジェクトは、多数のボランタリー開発者が関わってこそ進化する。企業はそこを一歩進んで支援し、バグ報奨金や優秀なコントリビュータへの奨学金などを設定することで、コミュニティのモチベーションを高めることができる。大規模言語モデルの改良にはGPUなどハードウェアリソースが欠かせないため、サーバー提供や実験環境の提供も大きな助けになる。
課題解決型プロジェクトの推進
たとえば災害対策や医療、農業、インフラ保守など、日本の社会問題を対象にした大規模プロジェクトを国が旗振りするのも有効だ。そのときにDeepSeekR1のようなオープンソースAIを基盤とし、産学官が協力してスピーディにPoCを回す流れができれば、世界が注目する“先進事例”となる可能性がある。そこで得られた知見は、他国にも輸出可能なソリューションとして発展し得るだろう。
倫理チェック体制の徹底
AIが出す結果や決定が社会に与える影響は大きい。少数派や弱者を無視したり、誤情報を大々的に広めたりするリスクに常に気を配らなくてはならない。大きなプロジェクトでは定期的に“倫理的・社会的影響”を点検する仕組みを取り入れ、モデルのアップデートに合わせて改善策を練ることが望ましい。
AIオープンソース時代の逆転劇は起こり得るか
大規模言語モデルがオープンソースで公開されれば、技術開発の初期ハードルは劇的に下がる。その状況で「今更AIなんて無理じゃないか」と思っていた国や企業が、一気に波に乗り始めても不思議ではない。日本も含めて、“これまで傍観気味だった”とされる地域が独自の特化型ソリューションをどんどん発表する流れになれば、世界地図が塗り替わるような変化が起こるかもしれない。
ただし、それには明確なビジョンと行動が必要だ。単に「無料だから使う」で終わってしまえば、結局インターフェイスを変えただけの付加価値の低いサービスしか生まれない可能性がある。そこに産業や社会の深い課題解決へのアプローチを融合し、データを賢く使う仕掛けを作るなど、戦略的な取り組みが欠かせない。
もし成功すれば、日本が強みとする精密なものづくりや、丁寧な品質管理の文化がAI活用でさらに発展し、“新しい時代のパイオニア”として世界から注目を集めるシナリオも十分あり得る。一方で、そうした動きが遅れれば、再び海外のイノベーションに頼るだけになり、国内産業が空洞化するリスクも払拭できない。
変化のスピードが速いだけに、激しい混乱や新たな摩擦も確実に起こるだろう。それでも、AIが民主化されるという事実がもたらす“可能性”はこれまでになかったほど大きい。要は、エネルギーの向かう先が将来的に豊かな社会の構築であれば、オープンソースAIが世界のあちこちに広がることで、今は想像すらできない実験や発見が続々と生まれていくに違いない。
結論と未来への視座
AIがフリーで使えるなら、もう大企業に任せっきりにする必要はない。小規模でも面白いアイデアを持った人や組織が、独自のモデルを育てて世界へ打って出る時代が来つつある。日本は従来「データ活用が苦手」と言われ続けてきたが、データの壁は法整備と連携次第でいくらでも克服可能だし、AIそのものの土台が無償で使えるなら資金不足を言い訳にはできなくなる。
むしろ本質的な勝負は「どんな課題を解決したいか」「そのためにどうデータを集め、どう運用・監査するか」というビジョンとチームワークに移っていく。もちろんOSSモデルに潜むリスクや安全保障的な懸念を無視するわけにはいかないが、そこも含めてコミュニティや産業界が協力し合うことで、より透明で強固な仕組みが生まれる可能性が高い。
将来的には、今の私たちでは想像もできないレベルの大規模モデルが続々と出現し、AIの自律性や倫理観をめぐる議論が過熱するかもしれない。あるいは、全世界のユーザーがコントリビューションし合い“グローバルな共有知”を形作る流れが定着し、それが新たな政治・経済の秩序さえも変えてしまうかもしれない。
いずれにせよ、オープンソースAI時代の到来は、過去の歴史で例を見ないほど多層的な変化を引き起こす。多様な価値観や矛盾、パラドックスをまるごと抱え込みながら、それらを何とか結びつけてイノベーションに転化しようとする動きが世界規模で進むだろう。その最前線に立つのが、プログラミングに詳しい人だけでなく、全く別の専門や文化背景を持つ人たちだという点が、かつてない面白さを秘めている。
最終的に大切なのは、ただAIを導入して終わりではなく、実際に社会や人間の営みをより豊かにする方向へ向かうかどうか、という部分に尽きる。日本もこのタイミングを逃さず、自国の得意分野とオープンソースAIを組み合わせる具体的なアクションを起こせば、世界の意外なリーダーになり得るかもしれない。
おまけ:行動プランのヒント
- オープンコミュニティに参加する
国内外の開発者が集まるプラットフォーム(GitHubやHugging Faceなど)で、DeepSeekR1の派生プロジェクトを探し、自社や個人のアイデアを試せる場を見つけよう。積極的にバグ報告やアイデアを投稿するだけでも、コミュニティに存在感を示せる。 - 産官学連携で実証実験を進める
介護や医療、インフラ監視など、日本特有の社会問題をテーマにした共同研究プロジェクトを立ち上げ、DeepSeekR1の利活用を試してみる。自治体や大学と組むと実証の幅が広がり、成果を早い段階で社会に還元できる。 - データ共有の仕組みづくり
企業や研究機関同士で、安全かつ匿名化した状態でデータをやりとりするルールを策定する。法律やガイドラインを遵守しつつ、みんなで使えるデータのプールを拡大すれば、モデルの性能向上に役立つはず。 - ユーザーフレンドリーなプロダクト化
オープンソースのモデルそのものを売るのではなく、それを組み込んだサービスや製品として提供し、UI/UXやサポートの質で差別化を図る。特に日本語話者向けや特定業界向けに特化したアプリケーションは需要が高い。 - グローバル視点を忘れない
国内の課題解決に目を向けつつ、そのソリューションが海外でどんなニーズに応用できるかを常に意識する。アジアの高齢化社会や新興国のインフラ整備など、日本と似た課題を抱える地域は世界中にあるので、うまく連携すれば市場が大きく広がる。
こうした取り組みを積み重ねるうちに、オープンソースAIを軸とした新たなエコシステムが育ち、結果として日本の「AI出遅れ」イメージを払拭するシナリオが実現するかもしれない。モデルのコードやライセンスがオープンになった瞬間から、壮大なチャンスと予測不能な未来が広がっているのは間違いない。
どこに可能性を感じて動き出すか、どんな異なる観点や文化を組み合わせていくか、それこそがこれからの勝負どころだ。要するに、みんなが知っているAIの常識を越えて、あらゆる思考やデータを縦横無尽に織り込んでいけば、今はまだ見えない世界を形作る大きな波を作り出すことだって可能なのである。
■追伸:ビジネスを自動化するための無料講座
「ネット集客と販売を自動化するなら, 最低限これだけは知っておきたい」という内容を1冊の教科書としてまとめました。
また, 最近のAIの台頭を受けて, これをどう捉え, どう使うかといった内容も加筆しています。
投稿者プロフィール
- そうた
-
近況:Netflix, ゲーム, 旅, 趣味の日々。
■趣味
読書, 映画鑑賞, 音楽, 旅行
■ビジネス歴
・2011年9月頃にオンラインビジネスに参入
└ブログ, SNS運用, YouTubeなどの各ジャンルを経験
・オンラインビジネスチームへの参画
└各プロモーションのディレクター兼コピーライター,
他社へのコンサルティングなどを経験
└他社とのジョイントベンチャー(共同事業)
└海外スタートアップへの参加(コミュニティマネジメント, コピーライター)
■現在
・オンラインスクールの運営
・個人, 法人向けのマーケティング, 商品開発等のサポート
■考え方
バイト, 会社員, フリーランス, 経営者...などの働き方を経験した結果,
「群れるより1人で稼ぐ方がストレスが無い」と気づく。
現在は集客, 販売, サービス提供を仕組み化(自動化)。
■活動目的
「自由な人生を実現したい」
「ネットビジネスに興味がある」
「始めたけど結果が出ない」
という人へ最適解を提供。
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