経済・社会

就職氷河期世代とは?不遇を背負わされた「失われた世代」のリアル

Table of Contents

1. 就職氷河期世代とは?:定義と歴史的背景

「就職氷河期世代」という言葉を初めて耳にした方も、あるいは自分こそが当事者だという方もいるでしょう。

一般的には、1990年代半ばから2000年代前半ごろに学校を卒業して、社会に出た世代を指すことが多いです。

ここには、いわゆる「団塊ジュニア」や「第二次ベビーブーム世代」も含まれ、人口が非常に多いのが特徴。

ちょうどバブル経済が崩壊した直後というタイミングであるため、企業の求人は極端に縮小し、就職難が社会問題になりました。

当時の雇用情勢は今とは比べものにならないほど厳しく、大学卒業者であっても「内定ゼロ」で卒業せざるを得ない人が珍しくなかったんです。

いわゆる「新卒一括採用」が日本では主流ですが、バブル崩壊により採用枠の大幅カットが相次ぎ、本来なら採用を受け入れるはずだった企業が軒並み「採用見送り」という状態に。

人数が多い世代と採用枠激減という最悪の組み合わせで、“就職氷河期”が生まれてしまったのです。

さらに、その最初の数年で正社員のチャンスを逃すと、後々までその影響が尾を引くという日本型雇用のシステムも相まって、「就職のスタートラインに立つことすらできなかった世代」が大量に生まれました。

社会的にも「自己責任」という言葉が台頭しはじめ、国も十分な対策を取らないまま数十年が経ってしまった。

これが「就職氷河期世代」問題の一つの大枠といえます。

2. なぜ「就職氷河期」が起こった?:日本経済と社会の転換期

就職氷河期が生まれた背景には、いくつかの大きな要因が存在します。

まず、バブル崩壊後の不良債権処理や金融危機が、企業の採用意欲を一気に冷え込ませました。

バブル時代は「とりあえず人を採っておけばいい」といわんばかりに新卒一括採用が行われていましたが、逆回転が始まった瞬間に採用どころではなくなったのです。

また、海外市場のグローバル化が一気に進み、日本企業が国際競争力を維持するためにコスト削減へとシフトしていったことも大きい。

人件費削減のため、新卒枠は最低限に絞り、中途採用も即戦力だけを狙うようになりました。

ここで真っ先に割を食うのが、新卒のタイミングで景気低迷にぶつかった若年層。

さらに日本では「年齢が上がるほど給与が上がる」「一度雇ったら正社員として終身雇用で育てる」という文化が長年根付いていたので、企業側としては慎重にならざるを得なかったのです。

そして、就職活動の仕組みそのものに問題がありました。

新卒一括採用でほぼ一括で採用が終わる日本独特の慣習では、卒業後に正社員としてのポジションを得られないと、その後はいわゆる「既卒扱い」や「フリーター・アルバイト」などになってしまいがち。

「今からでも正社員採用を狙いたい」と思っても、企業の採用ページでは「新卒限定」「第二新卒歓迎」といった枠組みばかりで、既卒や年齢が上の層に門戸は狭いという構造的な問題がありました。

3. 就職氷河期世代が直面したリアルな困難

(1) 新卒一括採用の壁

日本企業は年度ごとにまとめて学生を採用する傾向が強いです。

そのため、卒業年度の景気動向が運命を左右する面が大きく、世代間によって「採用率」に大きな差が出ます。

就職氷河期世代は、最悪のタイミングで就職活動を迎え、まともな募集がほとんど出ていなかったという切実な声が多数あるのが特徴です。

(2) 人数の多さと求人の少なさ

就職氷河期世代は、いわゆる団塊ジュニアを含む人口の多い世代。

この“分母が大きい”状態で、景気後退に突入したので、当然ながら就職競争はものすごい激戦。

倍率が10倍、20倍は当たり前、という企業もありました。「大企業だけでなく中小企業でも10倍以上」と聞くと、どれだけ当時の就職環境が極端だったかわかります。

(3) 正社員登用へのハードル

一度正社員を逃すと、その後のキャリア形成が一気に難しくなるのが日本の特徴。

職務経歴を問わず、あくまで「新卒か、そうでないか」でまずふるいにかけられる場合が多く、さらに求人情報では「35歳まで」など年齢制限(明示的・黙示的なものも含む)がある企業も珍しくなかったのです。

(4) 非正規雇用から抜け出せない連鎖

やむを得ずアルバイトや派遣社員として働きだしても、「雇用形態が不安定なまま年齢を重ねてしまう」という連鎖が生まれがち。

次こそ正社員を目指そうにも、面接官からは「どうしてこれまで正社員にならなかったの?」と詰問されるケースが多く、本人が悪いわけでもないのにキャリアの空白や非正規の経歴を負の評価にされてしまうという構図があります。

(5) 世代間のギャップと「自己責任論」

バブル期を経験した親世代やその上の世代は「就職なんて楽勝でしょ」「努力が足りないんじゃないの?」と、厳しい言葉をぶつけてくるケースも。

特に「就職は選ばなければいくらでもある」という感覚が染みついた世代には、若年者の就職難が実感としてピンと来なかったのです。

こうして、親からも社会からも「自己責任」と見なされる風潮が強まり、氷河期世代の精神的ストレスはさらに増幅していきました。

4. 具体的なエピソード・事例

(1) 大学卒業後、就職先がゼロに近い世界

当時を知るある男性の話では、大学4年生の就職活動期に、20社以上、30社以上とエントリーシートを出しまくっても書類選考すら通らない状態だったといいます。

学校のキャリアセンターから紹介される企業リストも氷河期以前とは比べ物にならないほど少なく、同世代同士で求人情報を奪い合うような有様。

ギリギリ卒業直前で内定をもらえた友人も、数か月後には「業績不振で内定取り消し」なんてことになり、結局アルバイトで食いつなぐしかなかったそうです。

(2) せっかく入社しても人員整理…「すぐにリストラ対象」

運よく正社員として就職できたとしても、企業側は余裕がないのでリストラや人員整理を早々に行うケースが相次ぎました。

試用期間中に解雇、早期退職制度を若手にも勧める、昇給制度そのものを廃止して残業代を大幅に削る…といった、厳しい労働環境のしわ寄せが若手に集中。

せっかくレールに乗れたと思ったら外されるという、「スタートラインにすら立たせてもらえない」状況が幾度となく繰り返されました。

(3) 親世代との価値観の相違

とくにバブル期を知っている親は、自分たちが若い頃の就職活動の感覚をそのまま子どもに押し付けることも少なくなかったようです。

「新卒カードを無駄にするなんてあり得ない」「やる気があれば何でもできる」といった精神論だけが先走り、実際の求人市場の厳しさとまるで噛み合わない指摘に、子どもとしてはやるせない思いを抱え続けました。

(4) リーマンショック重なり組:氷河期世代の“延長戦”

さらに不運だったのは、氷河期世代に続く一部の世代がリーマンショック(2008年)直撃でダメージを受け、加えて東日本大震災(2011年)という大変動もあったこと。

氷河期世代の中には、30代・40代と働き盛りの時期に再び不景気が波及し、ようやく掴みかけた正社員やキャリアアップのチャンスを逸してしまったケースもあります。

まさに「不運が重なる」というフレーズがピッタリで、歴史的に見ても極端に運の悪い世代となってしまいました。

5. 就職氷河期世代がもたらす社会的影響

(1) 少子化との関連

「正社員になれない」「収入が安定しない」→「将来設計が立てられない」→「結婚や出産を諦める」という流れが、多くの氷河期世代の中で生じたことは想像に難くありません。

実際に、経済的な理由から結婚を先送りしているカップルや、そもそも婚活どころじゃないという声が続出し、これが少子化に拍車をかけた一因とも言われます。

(2) 消費行動の縮小と経済停滞

「安定収入がない」「昇給・ボーナスなし」となると、当然ながら大きな消費には踏み切れず、車や家を買うといった行動も難しくなります。

消費マインドが冷え込むと、経済はさらに落ち込み、企業の売上も伸び悩むという悪循環に陥ります。

本来であれば、働き盛りの世代が積極的に消費・投資を行って経済を回すところを、散財できる余裕がないまま年齢を重ねていく状況が続いたのです。

(3) 年金や医療保険など、社会保障の不安

非正規雇用が長いと、将来の年金額や健康保険の保障も薄くなりがち。

厚生年金ではなく国民年金のみ、もしくは未納期間が長引くなど、老後資金にも大きな不安がつきまといます。

特に40代・50代になっても正社員経験が乏しい人が多いと、さらに高齢化が進む将来、生活保護受給などによる社会的コストが大きくなるという懸念が強まっています。

6. 国や企業の対策:遅きに失した支援の数々

(1) 就職氷河期世代支援プログラムの始動

厚生労働省をはじめとする国の機関は、ようやく就職氷河期世代向けの支援策に本腰を入れ始めました。

たとえば「就職氷河期世代支援プログラム」や、期間を区切った採用枠(氷河期世代限定の中途採用)などが具体例です。

しかし、これらの制度が整い始めたのはごく近年のことであり、当の氷河期世代が既に40代・50代に差し掛かっている現状では「もう手遅れでは?」という声も少なくありません。

(2) 中途採用・キャリアアップ支援の強化

近年では企業の採用意欲が回復傾向にあるとはいえ、相変わらず「若年層優先」の姿勢が拭えないところも多いのが現状です。

一方で、少子高齢化に伴う労働力不足も深刻化しているため、企業側もミドル・シニア採用に目を向けざるを得ない時代になってきています。

ここに、就職氷河期世代が再チャレンジするチャンスがあるとも言えます。

ただし、本格的に年齢問わずフラットに採用するという風土が日本企業に根付くには、まだまだ時間がかかりそうです。

就職氷河期世代の多くが、既に「転職市場での年齢の壁」を実感してきており、そこをどう乗り越えるかが大きな課題になります。

(3) 求められる雇用制度の柔軟化

日本では新卒一括採用・終身雇用・年功序列を前提とした雇用慣行が長く続き、これらが就職氷河期世代を苦しめる一因ともなってきました。

今後は、中途採用が当たり前、あるいはスキルや即戦力の有無で評価する仕組みにシフトしなければ、産業界全体が人手不足で立ち行かなくなる可能性が高いです。

こうした柔軟化が進めば、氷河期世代も活躍の場を得やすくなるでしょう。

7. いま直面する課題と、私たちができること

(1) 個人としてのスキルアップ・学び直し

厳しい現実として、一度就職氷河期で正社員としてのキャリアをスタートできなかった人は、年齢を重ねるにつれ「実務経験」や「専門知識」の不足を指摘されることが多いです。

ここで重要なのが、学び直しの機会です。

  • 職業訓練校の活用
    厚生労働省や自治体が運営する職業訓練校では、ITスキルや事務系スキル、介護・福祉など多彩なコースが用意されています。
    受講料が安い、あるいは無料の場合も多いので、興味ある分野から再スタートを切るのも1つの手。
  • オンライン学習
    最近はプログラミングスクールやデザインスキルのオンライン講座など、学びの場が充実しています。
    特にIT関連は経験よりも成果物(ポートフォリオ)が評価されるケースも多く、年齢にとらわれず挑戦できる分野といえるでしょう。

もちろん、「そんな余裕はない」という方も多いでしょう。

でも、非正規雇用を続けながら少しずつスキルを積み上げるなど、自分の付加価値を高める方向にシフトしていくことが、将来的に収入アップや安定につながる可能性は高いです。

(2) 企業としてのダイバーシティ推進・人材活用

日本企業は、少子高齢化で若年労働力が著しく不足しつつある現実に直面しています。

そこをカバーしうるのが「ミドル以上の世代」や、実は潜在的に高いポテンシャルを持ちつつも適切な就業機会に恵まれなかった人材です。企業にとっては、

  • 年齢・経歴でフィルタリングしすぎない採用
  • OJTやスキル研修を充実させ、中途入社の人も長期的に育成する

といった取り組みが不可欠です。

実際、海外のグローバル企業では、30代でも40代でも未経験分野に挑戦できる求人が当たり前のように存在します。

日本でもその流れが少しずつ出てきているのは好兆候ですが、まだまだ一部にとどまっているのが現状です。

(3) 社会やコミュニティレベルでの包摂・セーフティネット

就職氷河期世代の中には、就労そのものがままならない人、長期的に引きこもってしまっている人、就活での挫折や家庭環境の事情などで二次的・三次的に苦しい状況に追い込まれている人もいます。

そういったケースでは、

  • NPOや自治体の相談窓口を活用する
  • 住居や生活支援などの制度を早めに調べる
  • 職場だけでなく、地域コミュニティの支援

が重要です。生活保護や各種給付金制度は「恥ずかしい」と思われがちですが、困ったときに利用するのは当然の権利です。

逆に、早期に使える制度を使わずに放置してしまうと、より深刻化して立ち直りが難しくなります。

8. まとめ:失われたままにしないために

就職氷河期世代は、いわば日本社会の構造的な歪みと不運が重なり、大きな痛手を負わされた世代です。

最初の数年で社会に拒否されたような経験をし、「どうせ自分なんて」という挫折感を長く抱え続けてきた人も決して少なくありません。

しかし、ここで終わりにしてしまうと、国全体としても非常に大きな損失を抱えたまま少子高齢化社会に突入することになります。

賃金の低迷や消費の落ち込みは経済をさらに冷やし、社会保障の負担が高まっていく。

そんな未来が待ち構えているのは、私たち全員にとって望ましくないはず。

だからこそ、今は**「手遅れ感」が漂っていても**、さまざまな対策や個人の努力、そして企業・社会の意識改革を総動員していく必要があるのです。

「自己責任論」に押しつぶされがちですが、本質的には**「働く意欲があるのに、就職のスタートラインを用意されなかった」**のが就職氷河期世代の苦しみの根底にあります。

そこに気づけるかどうかが、社会としての成熟度を測る試金石でもあると言えるでしょう。

これからを生き抜くために

  • 個人レベルでは、スキルアップや資格取得、あるいは副業などを駆使して現実的な活路を探る
  • 企業レベルでは、年齢だけでなく意欲と実務能力を重視した採用方針へシフトする
  • 行政レベルでは、就職氷河期世代の支援を特別枠で継続的に充実させる
  • 社会全体では、「自己責任」ではなく「誰もがつまずき得る」ことを前提としたセーフティネットを整備する

こうした取り組みを地道に積み重ねていかなければ、就職氷河期世代が長年背負ってきた課題は解決しないでしょう。

そして、これはすでに「彼らだけの問題」ではなく、日本全体が避けては通れない問題となっています。

一度奪われかけた希望を取り戻すために、そして未来の世代が同じような不遇を味わわないようにするためにも。

いまこそ、就職氷河期世代の苦難と、その先にある可能性に目を向けるべきではないでしょうか。

(※本記事の内容は執筆時点の情報を元にまとめています。就職氷河期世代への支援制度や企業の採用動向は変化する可能性がありますので、最新情報は厚生労働省や各種支援団体、企業の採用ページなどでご確認ください。)

ちなみに:政府の失策や社会の歪みで生み出された不遇の世代事例

以下では、「政府の失策」や「社会構造の歪み」が原因で生み出され、不遇を強いられた(あるいはそう評される)世代を、国内外の歴史からいくつかピックアップしてみる。

もちろん、どの世代の苦難も複数の要因が重なっているため「政府の失策だけが原因」とは限らない。

それでも、結果的に政府の対応が後手後手になり、特定の年齢層が不運に巻き込まれた例は少なくない。

1. 欧州:第一次世界大戦後の「ロスト・ジェネレーション」(Lost Generation)

  • 背景と不遇の理由
    第一次世界大戦(1914–1918)後、ヨーロッパは社会・経済が混乱し、インフレや失業が深刻化。
    若い世代は戦場から復員した後も、仕事や生活の再建に苦しんだ。
    アメリカの作家ガートルード・スタインが言及し、のちにヘミングウェイらを象徴する言葉となった「ロスト・ジェネレーション」は、戦争のトラウマや政治経済の混乱によって精神的にも社会的にも大きな喪失感を抱えた世代。
    もちろん、当時は「政府の失策」と一括りにできるほど単純ではないが、戦争の余波に対し有効な社会保障策や復員兵支援が十分でなかったことが、帰還兵や若年労働者の困窮につながったとされる。

2. 米国:大恐慌(1929年)で苦しんだ「デプレッション世代」

  • 背景と不遇の理由
    1929年、ウォール街の株価暴落をきっかけに世界恐慌が勃発。失業率が急上昇し、特に若者・労働者階層が仕事を失い、貧困に陥った。
    フランクリン・ルーズベルト大統領によるニューディール政策で雇用創出が図られたものの、あまりに危機が大規模だったため対策が追いつかなかった。
    政府の金融引き締めや保護貿易政策の失敗などが重なり、「もっと早期に適切な金融政策を打てばここまでの大惨事にはならなかった」という批判も根強い。
    これにより10代後半〜20代の若者が“自力でどうにもならない”不況に直面し、「デプレッション(恐慌)世代」として苦しい青春期を過ごしたと言われる。

3. ソ連崩壊(1991年)直後のロシア:経済混乱の煽りを受けた世代

  • 背景と不遇の理由
    1991年にソビエト連邦が崩壊すると、一気に資本主義へと移行し始めたロシアはハイパーインフレ、失業の急増など経済混乱が続いた。
    政府の経済改革(ショック療法)が急すぎたため、国民の生活インフラや雇用状況が整わず、とくに若い世代は安定した仕事や教育の機会を確保しづらい状況に追い込まれた。
    年配世代はまだソ連時代の社会保障体制に守られていた部分もあったが、就職や結婚の時期を迎えた世代は社会的セーフティネットの欠如に直面。「国家や政府がうまく移行計画を練らなかった」という批判も多い。

4. 中国:文化大革命期(1966–1976)に教育機会を奪われた「上山下郷世代」

  • 背景と不遇の理由
    毛沢東時代の文化大革命では、紅衛兵運動などで学校教育が停止・混乱したり、都市部の若者を農村に送って労働させる「上山下郷運動」が行われたりした。
    これにより、本来教育や就職準備をするはずだった10代・20代が学業の機会を失い、また農村での過酷な生活・労働を強いられた。
    文化大革命終結後も彼らの就職・キャリア形成は大幅に遅れ、復学したくても年齢的・制度的に難しく、政府の方針転換が突然だったこともあって、多くの若者が取り残される結果に。
    これは「政治路線の失敗」が直接若年世代を翻弄した一例と言える。

5. 韓国:IMF危機(アジア通貨危機)の煽りを受けた「Sampo世代」など

  • 背景と不遇の理由
    1997年のアジア通貨危機の際、韓国はIMF(国際通貨基金)の支援を受ける代わりに構造調整(リストラや財閥解体・改革など)を迫られた。
    結果、若者が急激な就職難や非正規雇用の増加、低賃金に苦しむ時代がしばらく続いた。
    その後の経済成長局面でも、大企業による正社員一括採用は狭き門となり、競争激化や社会的格差が拡大。
    結婚や出産、マイホームなどを「三つ諦める(Sampo)」という言葉が生まれるほど、若者の生活設計が厳しくなった。
    政府の雇用対策が後手後手に回ったこともあり、「政府失策が生んだ不遇の若者世代」と言われることも多い。

6. ギリシャ:金融危機(2009年〜)以降の若年層

  • 背景と不遇の理由
    2009年に深刻化したギリシャの債務危機は、EUやIMFの管理下で強烈な緊縮財政を敷く結果を招いた。
    公務員の大量解雇、年金削減、雇用先の激減などにより、若者の失業率が一時は50%を超える事態に。
    これも「政府の長年の放漫財政と欧州当局の対応の遅れ」が招いた危機とされ、とりわけ10代・20代が「仕事がない」「未来が見えない」という不遇を強いられた。
    スペインやイタリアなど南欧諸国でも似た状況が起き、「EU危機世代」と呼ばれることもある。

7. 日本:いわゆる「失われた10年」〜「就職氷河期世代」

  • 背景と不遇の理由
    すでにご存じの通り、日本ではバブル崩壊(1990年代前半)からの金融危機が長引き、新卒採用が激減。
    1990年代半ば〜2000年代前半に社会に出るはずだった層が正社員になれず、非正規雇用にとどまったり、フリーターから抜け出せなくなったりする構造が生まれた。
    政府による雇用対策が後手になり、就職氷河期世代向けの本格的な支援策(第二新卒枠拡充、再教育など)はほぼ機能しないまま時が過ぎてしまった。

8. ラテンアメリカ:1980年代の「失われた10年」

  • 背景と不遇の理由
    1980年代、メキシコやアルゼンチン、ブラジルなどは累積債務危機で経済が崩壊状態になり、ハイパーインフレや国際金融機関の管理下での緊縮政策に苦しんだ。
    「失われた10年」と呼ばれるこの時期、若者は教育機会が大幅に制限され、大卒者でも就職先が見つからない状況。
    政府の財政・金融政策の不備や汚職、海外からの借金まみれの状態が引き金となっており、「本来、適切な対策で被害が小さく抑えられたのでは?」という批判が根強い。

まとめと所感

歴史を振り返ると、政府の政策ミスや急激な路線変更が、意図せず特定の世代を不遇に追い込む事例は世界各地に見られる。

戦争・革命・経済危機など、スケールはさまざまだが、若者の教育機会や就労機会が大打撃を受け、「就職のスタートライン」にさえ立てなくなるケースは多い。

こうした不遇世代が長期的に社会構造の中で取り残されると、国家全体の成長や財政にもマイナスの影響を与える。

日本の就職氷河期世代もまた、この文脈の一例といえる。

  • 「バブル崩壊後の緊縮・構造改革が必要だった」という擁護論はあれど、結果的に新卒採用を大幅に減らすだけで代替策を十分用意しなかったのは、明らかに政策・制度の問題。
  • 他国の事例と同様、「あの時、もう少し早くフォローしていれば」と言われるような失敗を後になって挽回しようとしているが、年齢を重ねてしまった当事者の困難はそう簡単に取り除けない。

時代や場所が変わっても、こうした“政治経済の大転換期で生じる不遇世代”が生まれるのはある意味「歴史の教訓」。

どこかで同じ轍を踏まないために、過去の事例を参考にする姿勢が社会に求められているといえるだろう。

ちなみに-2:「氷河期」じゃないから安心でもない

正直思うのは、昔はネットもスマホもなかったから、政府の失策でこけた場合、その影響を覆すのって、かなりしんどかったと思う。

その意味で、今また、政府の失策で、不遇の世代が生まれてしまった場合(なんかもう生まれてそうだけど!)や、少子高齢で現役世代が、結局のところ不遇の世代になってしまったとして、現代社会ではどうやってサバイブできるのだろう?

もちろん、お金を稼ぐって意味でね。結局のところ何が不遇かといえば、お金の面だと思うから…。

「現代社会の中で、不遇な状況に置かれてもサバイブするためのお金の稼ぎ方」について、ざっくりとまとめてみる。

政府の失策や社会構造の歪みという大きな潮流は個人でどうにもならない面があるけど、ネット・スマホが当たり前になった今だからこそできる選択肢も増えているはず。

以下にいくつかの視点を挙げてみるので、自分に合いそうなところを参考にしてもらえればと思う。

1. オンラインをフル活用して“手数”を増やす

(1)副業・兼業で分散化

現代は、会社員でも「副業OK」な職場が増えつつあるし、たとえ禁止されていても個人事業主として活動しやすい時代。

YouTube、SNS、ブログ、クラウドソーシング、スキルシェアサイト…など、ネット経由で稼ぐチャネルが豊富になった。

  • ライティング・デザイン系スキル
    文章を書く・ロゴやイラストを描く・動画編集をするなど、比較的スキル習得が独学でも可能なジャンルが盛り上がっている。
    ある程度スキルがつけば海外クライアント向けにも挑戦できるし、語学スキルがあれば翻訳や通訳みたいなことも可能。
  • 自分の得意をオンライン教室にする
    スポーツ指導、楽器レッスン、語学レッスンなどをZoomやSkype経由で行う人もいる。趣味レベルでも「教えられる技術」があれば、意外とマネタイズできたりする。

大きな金額を狙うより、少しずつ“本業外”の収入源を育てるのがポイント。

政府がどう動こうと動くまいと、自分の時間とリソースを“何に投下するか”で、将来が多少変わる。

昔だったら、まず店舗を構えないとビジネスが始められない…みたいな状況だったけど、今は個人単位でチャレンジしやすい空気が整ってる。

(2)プラットフォームに依存しすぎない工夫

ネットビジネスの落とし穴として、特定のSNSやプラットフォームの規約変更などがあると一気にしぼむリスクがある(YouTubeのアルゴリズム変更で収益激減…など)。分散化できればダメージを緩和できる。

  • たとえばYouTubeで発信しながらブログやメルマガも持つ、SNSも複数運用する…といった形で、“自前のメディア”と“外部プラットフォーム”を組み合わせると、長期的に安定しやすい。

2. スキル再構築&“学び直し”にチャンスがある

(1)オンライン学習コストが昔より激減

昔は専門学校へ通うか、参考書を買いに行くか…みたいに学習コストが大きかった。

でも今は、UdemyYouTubeの無料講座でも、プログラミング・デザイン・語学など一通りの基本を学ぶことが可能。

  • 学習にかかる費用が大幅に下がったぶん、少しのやる気で実務レベルのスキルを身につける道が開かれている。
  • 無料とはいえ、ある程度ちゃんとしたコンテンツも増えているので、試してみる価値は高い。

(2)IT・デジタル領域は“年齢より実績”傾向

プログラマー・Web制作などの業界は、比較的“実力主義”が浸透しており、ポートフォリオやGitHubを見れば年齢関係なくスキルを判断してもらえるケースが多い。

  • 大手企業だとまた別の採用フィルターが働くかもしれないが、ベンチャーや中小IT企業なら、コードを書ける人材を常に探しているところが珍しくない。
  • デザイン系やイラスト系も“作品の良し悪し”がすべてなので、実績を積んでしまえば人脈が広がり、さらに仕事のオファーが来るようになる。

(3)資格で堅実に攻める道もアリ

IT関連以外でも、医療・介護・保育・簿記・税理士などは一定の需要が見込める。

国も人手不足対策として、資格取得支援や職業訓練への補助金を出すことが多い。

  • とくに介護・保育系は「まだ人手不足だから正社員になりやすい」という側面も。給料水準が高いかは別問題だが、資格を軸にすれば食いっぱぐれは少ないのが強み。

3. コミュニティを作る・入る・頼る

(1)同世代・同境遇のネットワーク

昔は情報や人脈が地元の知り合いに依存しがちだったが、今はSNSで“似たような境遇の人”を見つけやすい。

  • 氷河期世代もそうだけど、今後生まれるかもしれない「新たな不遇世代」も、孤立しないようにコミュニティを作る・参加することで情報が得られる。
  • 効率的に役立つ情報(自治体の研修プログラム、補助金、助成金など)をシェアし合い、助け合える利点がある。

(2)NPOや自治体の支援を侮らない

「政府は当てにならない」と言いがちだけど、実際には自治体レベルやNPOが動いているケースも多い。

  • 地域によっては就労支援センター無料の職業訓練、さらには職歴や年齢にかかわらず利用できる公的制度がある。
  • 求人情報や助成金情報が一般には埋もれている場合もあり、そこのコーディネーターと話すだけで「こんな道があったんだ…」という展開もあり得る。

(3)共同事業・共同生活の可能性

SNSやオンラインコミュニティで意気投合して「シェアハウスを作る」「共同でビジネスを立ち上げる」といった発想も、昔よりハードルが低くなっている。

  • 一人で起業するとリスクが大きいが、同じ志向の仲間と共同出資する形なら、リスクを分散しつつ新しい道を模索できる。
  • これもネットのおかげで、同じ問題意識を持っている人とつながりやすいのがメリット。

4. 海外リモートやデジタルノマドという選択肢

(1)「日本国内だけ」で考えない

ITスキルや英語スキルがあれば、海外企業のリモート求人を探すことも可能。

日本の企業がシブいなら海外の会社で働く、という人もちらほら増えている。

  • 給与は米ドルやユーロで支払われることもあるし、国によっては日本より福利厚生が充実しているケースもある。
  • リモートOKなら、わざわざ海外に移住しなくても自宅から海外企業の仕事ができる。これは歴史的に見ると超絶革命的な状況だと思う。

(2)言語の壁はあるが、勉強コストは下がっている

「英語わからない」→「じゃあオンラインで勉強しよう」という流れが、数万円レベルですぐ始められる時代。

通訳や翻訳アプリを併用しながら仕事をしている人も珍しくない。

  • 数か月でペラペラになるかは個人次第だけど、ある程度読み書きができるだけで参入できる海外案件もある。
  • “翻訳アプリ+こなれたITスキル”だけでやっていく人も実際にいるので、「言語力がなきゃ絶対無理」というわけでもない。

5. 結局、どうすればサバイブできる?

(1)収入源を増やす・分散させるのが鉄則

政府が失策して不遇の世代が生まれたとしても、「自分で新しいマネタイズ手段を作る」ことである程度はカバーできる。

少なくとも昔みたいに“やりようがない”ほど追い詰められる前に、ネットを武器に動ける余地は大きい。

  • プラットフォームを複数持つ(SNS、動画配信、クラウドソーシング、ブログ運営など)
  • オフラインの資格や学び直しも並行し、より堅い収入源を確保

この両方をバランスよく行うと、経済状況が悪化してもどちらかで稼ぐ道が残りやすい。

(2)“横のつながり”を持つ

コミュニティ、SNSの活用、NPOなど、いろんなリソースをかき集める“つながり”が重要。極端な話、フォロワー数十万人クラスのSNSアカウントや、大きなオンラインコミュニティを持っている人って、周りに知恵や助けを求めやすい。うまく連携すればクラウドファンディングや共同プロジェクトで金を集めることもできる。これは昔には考えられない強み。

(3)海外・地方へのシフトも検討

物価や家賃が高い都会で無理して消耗するより、リモート仕事が確保できるなら地方に住む・海外の物価が安い国に住むという選択肢もある。

実際に「デジタルノマド」で東南アジアを拠点にしている日本人も多い。ネット経由で海外企業から仕事を受ける→物価安の国で暮らす、というスタイルで生活コストを下げるやり方だ。

まとめ

不遇の世代が再び生まれそう、あるいはもう生まれてる——そんな空気感はある。

少子高齢化で現役世代にすごい負担が乗しかかるのも確実だし、正直、国が真面目に動くかどうかも怪しい。

でも、昔ほど「どうしようもない」状況じゃないのは、ネットやスマホのおかげで個人がアクセスできる手段が増えているからだ。

  • 小さくてもいいから、複数の稼ぎ口を持つ
  • スキルアップや学び直しを低コストでできる時代を利用する
  • 国内外で多様な仕事を探せるので、収入源を国内だけに絞らない
  • コミュニティ・人脈をフル活用する

政府や社会が何とかしてくれなさそうなら、なおさら上記の行動を早めにとることで「生存確率」は上がるはず。

お金に困る不遇さを避けるには、「権威や決まりきったレールに依存しない生き方」を模索するしかないというのが、今のネット社会のリアルじゃないかと思う。

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「ネット集客と販売を自動化するなら, 最低限これだけは知っておきたい」という内容を1冊の教科書としてまとめました。

また, 最近のAIの台頭を受けて, これをどう捉え, どう使うかといった内容も加筆しています。

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投稿者プロフィール

そうた
そうた社会を静観する人
近況:Netflix, ゲーム, 旅, 趣味の日々。

■趣味
読書, 映画鑑賞, 音楽, 旅行

■ビジネス歴
・2011年9月頃にオンラインビジネスに参入
└ブログ, SNS運用, YouTubeなどの各ジャンルを経験

・オンラインビジネスチームへの参画
└各プロモーションのディレクター兼コピーライター,
 他社へのコンサルティングなどを経験
└他社とのジョイントベンチャー(共同事業)
└海外スタートアップへの参加(コミュニティマネジメント, コピーライター)

■現在
・オンラインスクールの運営
・個人, 法人向けのマーケティング, 商品開発等のサポート

■考え方
バイト, 会社員, フリーランス, 経営者...などの働き方を経験した結果,
「群れるより1人で稼ぐ方がストレスが無い」と気づく。
現在は集客, 販売, サービス提供を仕組み化(自動化)。

■活動目的
「自由な人生を実現したい」
「ネットビジネスに興味がある」
「始めたけど結果が出ない」
という人へ最適解を提供。

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